
パンの食感と風味を決める!知っておきたい製法の違い
パン屋さんで見かける数々のパンは、小麦粉や酵母、水といったシンプルな材料から作られています。それなのに、ふんわりしたものから、もっちりしたもの、パリッとしたものまで、食感や風味が驚くほど異なるのはなぜでしょうか。その秘密は「製法」の違いにあります。製法の違いを理解すると、パン選びがさらに楽しくなります。
ポーリッシュ法と中種法の違いが生み出す焼き上がりと食感
パン作りの代表的な製法に「ポーリッシュ法」と「中種法(なかだねほう)」があります。これらはどちらも、あらかじめ一部の材料を混ぜて発酵させてから本捏ねを行う方法ですが、仕上がりには大きな違いが生まれます。
ポーリッシュ法は、液種法とも呼ばれ、小麦粉と水を同量(1対1の割合)で合わせ、少量の酵母を加えて発酵させた液状の「種」を使います。この液種を使うことで、小麦粉の酵素が働き、生地の伸びが良くなります。焼き上がりは、皮(クラスト)が薄くパリッと仕上がり、中身(クラム)は軽やかで歯切れの良い食感になるのが特徴です。独特のフルーティーな香りや、すっきりとした味わいを楽しめます。
一方の中種法は、使用する小麦粉の大部分(半分以上)と水、酵母を混ぜて数時間発酵させ、しっかりとした「中種」を作ります。その後、残りの小麦粉や砂糖、油脂などを加えて本捏ねを行います。中種法で焼いたパンは、ボリュームが大きく出て、きめが細かく、非常にソフトな食感になります。また、水分を保持する力が強いため、時間が経ってもパサつきにくく、しっとりとした状態が長持ちします。普段私たちが口にする食パンや菓子パンなどに多く用いられている製法です。
高加水パンの魅力!チャバタとリュスティックの製法と違い
最近人気を集めているのが、生地にたっぷりの水を含ませて焼き上げる「高加水(こうかすい)パン」です。通常のパンは小麦粉に対して60%〜70%ほどの水分量ですが、高加水パンでは80%以上、時には100%近い水分を加えることもあります。この高い水分量が、独特のみずみずしい食感を生み出します。
代表的な高加水パンに「チャバタ」と「リュスティック」があります。どちらも素朴な見た目ですが、製法や特徴に細かな違いがあります。
イタリア発祥のチャバタは、「スリッパ」という意味を持つパンです。オリーブオイルが使われることが多く、生地を極力捏ねずに、折りたたむようにしてグルテンを繋ぎます。焼き上がると、中には大きな気泡が無数に広がり、しっとり、もっちりとした弾力のある食感が生まれます。サンドイッチにすると具材の水分や旨みをしっかり受け止めてくれます。
フランス発祥のリュスティックは、「素朴な」「田舎風の」という意味を持っています。チャバタと違い、一般的にはオリーブオイルなどの油脂を使わず、小麦粉、水、塩、酵母のみで作られます。成形の際も、生地を分割したそのままの状態で天板にのせて焼き上げます。そのため、皮はパリッと香ばしく、中は吸い付くような潤いともちもち感があり、小麦本来の素朴な甘みをダイレクトに味わえます。
自家製酵母パンと夏の過発酵対策、捏ね時間の工夫
自宅でパン作りを楽しむ方にとって、夏のパン作りは少しコツが必要です。特に自家製酵母パンは、夏の気温や湿度の影響を強く受けます。
夏場は酵母の活動が活発になるため、あっという間に発酵が進んでしまいます。これを放っておくと「過発酵」となり、生地がだれてしまったり、焼き上がったパンに強い酸味が出てしまったりします。過発酵を防ぐためには、生地の温度(捏ね上げ温度)を上げすぎない工夫が欠かせません。
生地を仕込む水には冷水、場合によっては氷水を使用します。また、生地を捏ねる時間(捏ね時間)を少し短縮するのも効果的です。捏ねる時間が長くなると、摩擦熱によって生地の温度が上昇してしまうためです。夏場は捏ねを早めに切り上げ、冷蔵庫を活用した「冷蔵発酵(低温長時間発酵)」を取り入れると、発酵のスピードをコントロールしやすくなります。
パンのオーバーナイト製法と夏場の冷蔵発酵時間
「オーバーナイト製法」とは、捏ね上げた生地を冷蔵庫などの低温環境で一晩(約8時間〜20時間)かけてゆっくりと発酵させる製法です。時間をかけて発酵させることで、小麦粉の一粒一粒に水分がじっくりと浸透し、デンプンが糖に分解され、小麦本来の甘みと旨みが引き出されます。
しかし、夏場にオーバーナイト製法を行う際は、冷蔵庫に入れるまでの時間管理がポイントです。捏ねたばかりの生地をすぐに冷蔵庫に入れても、生地の中心まで冷えるには時間がかかります。室温が高い夏は、冷蔵庫に入れる前に発酵が進みすぎることがあるため、捏ね上げ温度を22度〜24度程度と低めに抑え、捏ねたら速やかに冷蔵庫へ移すようにします。冷蔵庫での発酵時間は、生地の様子(1.5倍から2倍の大きさに膨らんでいるか)を見極めて調整してください。
また、家庭で手軽に作れる「こねないパン」も、夏場は冷蔵庫発酵が向いています。材料をスプーンやヘラで混ぜ合わせ、そのまま冷蔵庫に入れてゆっくり発酵させることで、暑いキッチンで力仕事をすることなく、しっとりとした美味しいパンが焼き上がります。
季節に合わせたパンの楽しみ方と傷み対策
四季のある日本では、季節の気温や湿度に合わせてパンの選び方や保存方法を変えることで、一年中美味しくパンを味わうことができます。特に夏は、傷みやすさへの対策や、暑い日でも喉を通りやすいパンの工夫が求められます。
湯種食パンの夏場の傷みやすさ対策と正しい保存方法
お湯を使って小麦粉を糊化(こか)させることで、独特のもちもち感と甘みを引き出す「湯種(ゆだね)食パン」。そのしっとりとした食感から非常に人気がありますが、水分を多く含んでいるため、夏場はカビが発生しやすく傷みやすいという特徴もあります。
夏場に湯種食パンを安全に、美味しく食べるための保存方法を紹介します。
買い求めたパンを常温のまま数日間放置するのは避けましょう。夏の室内は高温多湿になりがちで、パンにとって過酷な環境です。当日や翌日中に食べきれない場合は、すぐに冷凍保存するのが賢明です。
冷凍する際は、1枚ずつ丁寧にラップで包み、空気を抜いてジッパー付きの保存袋に入れます。こうすることで、乾燥や冷凍庫特有の臭い移りを防ぐことができます。食べるときは、凍ったままトースターで一気に焼き上げることで、外はサクッと、中は湯種ならではのもちもち感を損なわずに楽しむことができます。
冷やして美味しいパンと夏のスイーツパン
暑い季節には、温かいパンよりも「冷やして美味しいパン」が恋しくなります。しかし、一般的なパンは冷蔵庫に入れると、デンプンが老化(硬化)してボソボソとした食感になってしまいます。
冷やしても固くならず、美味しく食べられるパンには、製法や材料に秘密があります。
例えば、バターや卵、砂糖を贅沢に使用したブリオッシュ生地や、生クリーム、カスタードをたっぷりとはさんだ「スイーツパン」は、冷蔵庫でしっかりと冷やすことで、まるでひんやりとした洋菓子のような贅沢な味わいになります。また、水分量の多い高加水生地や、湯種製法で作られたパンにフルーツやクリームを合わせたサンドイッチも、冷やして食べるのに向いています。暑い夏の日の朝食や、おやつタイムに、キリッと冷やしたスイーツパンを用意してみてはいかがでしょうか。
揚げない製法でヘルシーに!焼きカレーパンの魅力
夏といえばスパイシーなカレーが食べたくなりますが、定番のカレーパンは油で揚げているため、カロリーや重さが気になるという方も多いのではないでしょうか。そんなときにおすすめなのが、油で揚げずにオーブンで焼き上げる「焼きカレーパン」です。
焼きカレーパンは、パン生地でカレーフィリングを包み、表面にパン粉や少量のオイルをのせて焼き上げます。揚げていないため大幅なカロリーオフが実現でき、食感もサクサクと軽やかで、暑い日でも胃にもたれず最後まで美味しく食べられます。スパイスの豊かな香りが引き立ち、夏の食欲を刺激してくれる一品です。
ビールに合うハード系パンの種類とおつまみ製法
夏の夕涼みや晩酌の時間に、冷えたビールと一緒にパンを合わせるのも大人の楽しみ方です。ビールに合わせるなら、柔らかいパンよりも、噛み応えのある「ハード系パン」がぴったりです。
例えば、香ばしいフランスパン(バゲット)や、ライ麦を使ったサワードウブレッドなどは、独特の酸味と深みがあり、ビールの苦味やコクを引き立ててくれます。サワードウブレッドは、野生の酵母と乳酸菌が共生する伝統的なサワー種(スターター)を使って作られますが、夏のスターターの管理方法は注意が必要です。夏は酵母の活動が早いため、こまめに種継ぎ(給餌)を行い、使わないときは冷蔵庫の野菜室などで静かに休ませるなど、徹底した温度管理が必要になります。
おつまみとして楽しむなら、生地にベーコンやチーズ、ブラックペッパー、ナッツなどを練り込んで焼き上げたハード系パンが抜群の相性を見せます。少しトーストして、オリーブオイルや塩を少しつけてかじるだけでも、贅沢なビールの相棒になります。
福岡県北九州市戸畑区で愛される「The 884 Bakery」のパンづくり
JR戸畑駅から徒歩5分という便利な場所にある「The 884 Bakery」は、職人が一つ一つのパンに心を込めて焼き上げているお店です。17年という長い歳月をパンづくりに捧げてきた職人が、毎日の気温や湿度の変化を見極め、生地の状態を五感で確かめながら、丁寧に作業を進めています。
生地と「会話する」職人の技
私たちのパンづくりの基本は、パンと「会話する」ように接することです。生地は生き物であり、季節やその日の天気によって、発酵の進み具合や水分の含み方が刻一刻と変化します。レシピの数値だけに頼るのではなく、手で触れたときの質感、発酵中の香り、生地の膨らみ方など、細かな変化を職人が鋭く感じ取り、仕込みや発酵の時間を微調整しています。
「美味しいのは当たり前」という強い信念を持ち、常に「もっと美味しくできるはず」と、技術の向上と最高の味わいを追い求めています。
当店では、定番のクリームパンやあんぱん、メロンパンといった昔ながらの優しい菓子パンから、独自のサクサク感を追求したミニクロワッサン、外はパリッと中はもっちり仕上げたフランスパンや明太フランス、生地の引きと旨みを楽しめるベーグル、そして毎日の食卓に欠かせない食パンや多彩な具材を挟んだサンドイッチまで、幅広く取り揃えています。
どれも一口食べれば、生地そのものの旨みが口いっぱいに広がる仕上がりです。パンが主役となる、心躍るような食体験をお届けしたいという想いを込めて、日々焼き上げています。
心地よい接客と、さりげないおもてなし
パンの美味しさはもちろんのこと、お店に一歩足を踏み入れた瞬間から、買い物を終えてお店を出るまでの時間すべてを心地よい体験にしていただきたいと考えています。過剰すぎず、一人ひとりのお客様に寄り添ったさりげない接客を心がけ、温かみのある空間を作っています。
「今日の朝食にはどのパンが合うだろう」「このハード系のパンにはどんな料理を合わせたらいいかな」といった疑問や、日々のパンの保存方法など、気になることがあれば、どうぞ気軽にお声がけください。
福岡県北九州市戸畑区近郊にお住まいの方や、お出かけの予定がある方は、ぜひJR戸畑駅から徒歩5分の「The 884 Bakery」へお立ち寄りいただき、職人が焼き上げる自慢のパンに触れてみてください。焼き立ての豊かな香りと共に、皆様のお越しを心よりお待ちしております。


